「信念を持つべきかどうかがよく分からない」
「『経営の神様』と呼ばれる稲盛和夫は、なぜ信念を持つことを勧めるのだろう」
稲盛和夫は京セラや KDDIの創業者として知られ、 経営破綻したJALの再建を成功に導いた稀代の名経営者として知られています。
しかし、「経営の神様」と呼ばれる稲盛和夫は著書や講演会などで「信念を貫く」ことの重要性を繰り返し語っています。
「信念」とは自分が正しいと信じている自分の考えを意味します。ビジネスにおいては、自分の考えよりも顧客のニーズやマーケティングの結果が正しいとされるため、信念を持ってビジネスに取り組むことはあまり推奨されていません。
そこで、今回は稲盛和夫がなぜ信念を持つことを推奨するのか。そして信念をどう貫くべきだと考えているのかを紹介していきましょう。
この記事で紹介する内容は以下の3点です。
- 稲盛和夫の生い立ちと『経営の神様』と呼ばれる理由
- ビジネスパーソンはどんな信念を持つべきか
- 稲盛和夫が考える「信念の貫き方」
Contents
稲盛和夫の生い立ちと「経営の神様」たる理由
稲盛和夫は日本のビジネス界でパナソニックの創業者・松下幸之助とともに「経営の神様」と呼ばれています。まずは、稲盛和夫の生い立ちと「経営の神様」と呼ばれるようになった経緯についてご紹介していきましょう。
生い立ちから「京セラ」の創業まで
稲盛和夫は1932年に鹿児島県で生まれました。印刷工場を経営していた家庭に育ち、戦時中には空襲で家を失うなどの苦しい経験を積みきました。
大学では有機化学を専攻し、卒業後は碍子(がいし)メーカーの松風工業に入社。社内では電子部品の基盤に使われるニューセラミックスの研究に携わりました。そして24歳で日本初のフォルステライトの合成に成功しました。
フォルステライトは当時普及が始まったばかりのテレビのブラウン管の部品として将来的な需要が大きく見込める素材でした。しかし上司と技術開発の方針を巡る対立が原因で松風工業を退社。別の上司や友人の支援を受けて1959年に27歳で京都セラミツク(現・京セラ)を創業し、取締役技術部長に就任しました。
創業直後から「京都で一番の会社になり、日本で一番の会社になったら、世界一の会社になろう」と高い目標を掲げ、海外進出に積極的に取り組みました。
その結果、 コンピューターメーカーのIBM から基盤の受注に成功。日本の中小企業が世界的大企業の基盤を製造するとあって、特に国内での知名度が一気に上昇しました。そしてエレクトロニクス産業の勃興期であることも追い風となって、京セラには多くの受注が寄せられるようになりました。
「社会の公器」としての役割を果たす
半導体という時代が求める製品を製造していた京セラは順調に業績を伸ばし、経営不振の企業を合併するなどして企業の規模はどんどん大きくなっていきました。しかし、稲盛和夫は規模が大きくなるに従って「会社は社会の公器である」という考えを強く打ち出すようになります。
そして、51歳で若手経営者のための経営塾「盛和塾」を立ち上げ、将来の日本経済を背負って立つ人材の育成に取り組むようになりました。また、長距離通信の料金が高いことに疑問を感じていた稲盛は、1984年に電気通信事業が自由化されると第二電電(現・KDDI)を設立。「国民のために是非ともやるべきである」という信念のもと、全くの異分野である通信事業に参入していきました。
参入を決断する前に、稲盛は毎晩「通信事業に参入する動機は善なのか。そこに私心は無いのか」と問い続けました。そして世のため人のために尽くすという信念を持って KDDI の経営にあたり、国内最大規模の通信会社に成長させて行ったのです。
JALの再建に成功し「経営の神様」と称される
2010年に日本航空(JAL)が戦後最大の負債を抱えて事実上破産すると、JALの再生のために政府は稲盛和夫に白羽の矢を立て、会長への就任を要請したのです。再建は不可能といわれており、周囲からは会長就任について多くの反対意見がありました。
しかし、稲盛は企業だけでなく自分自身も社会の公器であると考え、二次破綻による日本経済への悪影響を食い止め、国民の交通利便性を確保し、JAL グループ全体の従業員の雇用を守るために会長職を引き受けました。
そして社員が共通の価値観を持つための「フィロソフィー」と事業部ごとの独立採算を徹底する「アメーバ経営」によりJALは見事に再建を果たし、会社更生法の適用申請からわずか2年8ヶ月で再上場を果たしました。
このように、起業・異業種への進出・事業再生など経営上のあらゆるハードルを乗り越えてきた稲盛は、日本で最高の経営者と言われるパナソニックの創業者・松下幸之助と並び「経営の神様」と呼ばれるようになりました。
ビジネスパーソンはどんな信念を持つべきか
「経営の神様」と呼ばれる稲盛和夫は、自身の著書や講演などで繰り返し信念を持って仕事に取り組むことを推奨してきました。そこで、ビジネスパーソンはどんな信念を持つべきだと稲盛が考えているかをご紹介していきましょう。
信念はどう作るべきか
稲盛和夫は信念を作るにあたって大切にしなければならない考え方が二つあると語っています。それは「どんな環境であっても真面目に一生懸命仕事に取り組む」と「利他の心で判断する」ということです。
稲盛自身も新卒で入社した会社では上司との対立や経営環境の悪化で仕事が嫌になっていました。しかし「自分は素晴らしい仕事をしているのだ」と無理矢理にでも思うことで、今やるべきことに全身全霊で取り組めるよう自分自身をマインドセットしました。その結果、日本初のフォルステライト合成の成功に繋がったのです。
この経験から、どんな環境でも一生懸命に仕事に取り組むことが重要であると説いています。
また「人に良かれ」という「利他の心」で判断すると周囲の人が協力してくれるようになります。 稲盛和夫は若き技術者の時から「自分の技術で社会を良くしなければならない」と考えており、この考え方に共感した多くの仲間たちによって今日の京セラが作られていきました。第二電電の創業やJALの再建においても、「国民のために事業を成功させる」と利他の心から来る信念があったからこそ奇跡ともいえる成功を収めることができたのです。
これらの要素を踏まえた上で、自分自身が事を成すにはどんな信念を持つべきかを考え、確固たる信念でビジネスに臨むことが重要であると稲盛は語っています。
稲盛和夫が考える「信念の貫き方」
ビジネスにおいては市場や顧客など相手がある以上、信念を貫くことは難しいとされています。しかし稲盛和夫は仕事においてこそ信念を貫くべきだと考えています。そこで、どうすれば彼のように信念を貫けるのかをご紹介していきましょう。
「人として正しいか」を起点にする
多くのビジネスパーソンは「儲けたい」「稼ぎたい」という我欲を起点に物事を考えがちです。しかしたとえ一時的には会社に不利益でも、人間として正しい道を選べる信念を持つことが大切だと稲盛和夫は語っています。
信念に従って、人として正しい選択をすれば相手からの感謝だけでなく周囲の理解や共感も得やすくなります。こうして神様を積み重ねることで、相手からより大きな仕事を任され、社内で新たなプロジェクトに抜擢されるなど大きな成長機会を得るチャンスを手に入れることができるのです。
反対意見や逆境を「試練」として真正面から受け止める
稲盛和夫は「新しいことに挑戦する場合、反対意見や障害が出てくる。そこですぐに諦めてしまう人がいるが、素晴らしい仕事を成し遂げる人は全ての障害を高い理想に裏打ちされた信念で月崩していく。そうした人たちはこれらの障害を支援として真正面から受け止め自らの信念を高く掲げて進んでいく」と語っています。
また「信念を貫くには大変な勇気が必要ですが、信念がなければ革新的で創造的な仕事はできない」とも語っており、特に革新的で挑戦的な仕事には信念が欠かせません。
イノベーションにつきものである逆境を乗り越えるためにも、信念を持ってビジネスに取り組むことが重要であるといえるでしょう。
スミタイ向上委員長のまとめ
「経営の神様」と称される稲盛和夫は、常に利他の心でビジネスに取り組んできました。彼は短期的に見れば損失を被ったとしても、相手からの信頼や敬意を得ることで長期的により多くの利益を得られることを様々なビジネス経験から学んできました。
強い信念を持ち、利他の心によって得た利益を使い、さらに高い視座で社会に貢献することでより多くの利益を得る。という正のスパイラルによって経営する企業を成長させてきた稲盛は、まさにビジネスパーソンとして理想の働き方をしているといえるでしょう。
大事を成すには、逆境や障害にも負けない心を持つための確固たる信念が必要です。
ぜひ、皆さんも信念を持った視座の高いビジネスパーソンを目指していきましょう。
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