「ビジネスを有利に進めるためには、どんなことに気をつけるべきだろう?」
「孫正義にIT業界で起業するよう導いた藤田田とはどんな人?」
藤田田(ふじた でん)はマクドナルド日本法人の創業者として日本でのハンバーガービジネスを成功させた「ハンバーガーの父」であり、高度経済成長期に欧米文化を次々と日本に輸入してビジネスを成功させた「文化の伝道師」として名を馳せた経営者です。
また、 彼の著書「ユダヤの商法」は 1970年代のビジネス書のベストセラーであり、最近新装版が復刊したことで再び注目されているビジネスパーソンでもあります。
日本で最も有名な経営者の一人である孫正義は高校生の時に藤田田と会ったことでIT業界での起業を決意しました。
そんな藤田田がビジネスにおいて大切にしていたことが「信用を積み重ねる」ということでした。今回は信用を積み重ねることによってビジネスで大成した藤田田について紹介し、顧客からの信用を勝ち取るためにはどんな事をすれば良いかを紹介していきましょう。
この記事で紹介する内容は以下の3点です。
- 藤田田の生い立ちと日本マクドナルドの創業
- 「ユダヤ商法」と信用を積み重ねる方法
- 顧客からの信頼を得るために今日から取り組むべきこと
Contents
藤田田の生い立ちと日本マクドナルドの創業
藤田田は「ハンバーガーの父」と呼ばれ、マクドナルドを日本に輸入しただけでなく、トイザらスやブロックバスター(アメリカのレンタルビデオチェーン) など様々な欧米文化を日本にもたらしました。まずは、そんな藤田田の生い立ちについてご紹介していきましょう。
藤田田の生い立ちと『銀座のユダヤ人』としての信用
藤田田は1926年に大阪で生まれました。母親がキリスト教徒だったことから口に十字架という意味で「田(でん)」と名付けられました。
東京大学に進学すると、授業料と生活費を稼ぐために敗戦後の東京で通訳として働き出しました。そこで出会ったユダヤ人兵士が、階級が低いにも関わらず貸金業で贅沢な暮らしをしていたことに驚き、彼らから「ユダヤ商法」を学びました。
そして、ユダヤ人ネットワークの力を借りて在学中に起業。「藤田商店」を設立してヨーロッパからの輸入雑貨販売のビジネスを始めました。
『銀座のユダヤ人』と呼ばれた藤田のビジネスにおいての大きな転機は、ユダヤ人の経営する「アメリカンオイル」に300万本のナイフとフォークを納品した契約です。
この契約では生産が遅れてしまい、納期に間に合わせるためには飛行機をチャーターしてアメリカに飛ばすしかありませんでした。しかし、飛行機をチャーターすると大赤字になってしまいます。それでも藤田は契約を守ることを重視し、飛行機をチャーターして納期に間に合わせました。
これが功を奏し、翌年には倍の600万本の受注に成功しました。ところが、今年も生産が間に合わず、またもや飛行機をチャーターして製品を納品することになってしまいました。
2年連続の飛行機チャーターによって藤田は大赤字を被ることになってしまいましたが、自分の利益よりも契約を守る姿勢が評価され「藤田という日本人は信用できる」という情報が世界中の上流階級にも影響力を持つユダヤ人ネットワークによって広まっていきました。
これがきっかけでマクドナルドやトイザらスなどアメリカの大手チェーンの日本での経営権を得ることができたのです。
「ハンバーガーの父」と呼ばれ欧米文化の輸入に貢献
アメリカで大ヒットしていたハンバーガーチェーン「マクドナルド」の創業者はチェコ系ユダヤ人のレイ・クロックでした。彼は、日本への進出について「米と魚が食文化の国ではパンと肉のハンバーガーは成功しない」と考えており、300件近くあった日本企業からのフランチャイズの申し出を全て拒否していました。
しかし、新たな商材を探していた藤田田とユダヤ人コネクションの繋がりで面会することになった時に彼の素質を見抜き「あなたならマクドナルドのビジネスを成功させられる」とマクドナルドのビジネスを日本で展開することを勧めました。
この申し出に対し藤田は「合弁企業は対等の出資によって行う」「アメリカのアドバイスが受けるが命令は受けない」「経営は日本人が行う」 「フランチャイズのライセンスは2%にする(アメリカでのフランチャイズは5%)」といった 破格の条件をつけたものの、藤田の魅力に惚れたレイ・クロックに全て承諾させました。
折しも高度経済成長期で欧米への憧れが強かった日本では、アメリカの最新トレンドの店舗が日本に出店したとあってマクドナルドのビジネスは大成功しました。これにより藤田は「ハンバーガーの父」 と呼ばれるようになり、他にも「トイザらス」など様々なブランドを日本に持ち込み、欧米文化の普及に大きく貢献しました。
ちなみに、アメリカ側は日本でのブランド名を英語の発音を再現した「マクダーナルズ」にすることを提案しましたが、言語の研究が趣味であった藤田によって「マクドナルド」に変更されました。この時、アメリカ側から猛反発がありましたが「命令は受けない契約になっている」という理由で反対をシャットアウト。日本人が発音しやすい今のブランド名に落ち着きました。
「ユダヤ商法」と信用を積み重ねる方法
藤田田は学生時代にユダヤ人兵士と知り合い、彼らから「ユダヤ商法」を学ぶことでビジネスを成功させる大きなきっかけをつかみました。 そこで、ユダヤ商法の概要と信用を積み重ねる方法についてご紹介していきましょう。
「ユダヤ商法」とは
ユダヤ人は歴史的に迫害の対象とされていた時期があり「国なき民」と呼ばれていました。 彼らは常に他民族の治める国で生活を強いられ、農業や工業で身を立ててもそれを奪われてしまいました。そこでユダヤ人は「知識なら奪われることはない」と勉学に励み、それぞれの国で弁護士や医者、金融業など社会の上流層とされる職業に就くことで社会全体に影響力を持つようになっていきました。
このような歴史的経緯からユダヤ人は農業や工業ではなく商業を得意とする民族で彼らが持つノウハウが「ユダヤ商法」として伝えられてきました。
ユダヤ商法の中には「数字に強くなる」「富裕層を相手にビジネスを行う」 「時は金なり」「高く売るために消費者を教育する」など様々な教えがありますが、藤田田が注目し、 実践したのが「契約は絶対に守る」という考え方です。
ユダヤ人は契約に対して特に厳格で、契約を守る人間を信用する一方、契約を守らない人間を友人として扱うことはありませんでした。
信用を積み重ねる方法
ユダヤ人は「契約の民」と呼ばれるほど契約内容を守ることを徹底しています。藤田田がそんなユダヤ人からの信用を勝ち取り、ビジネスに成功したのはひとえに「信用を積み重ねてきた結果」といえるでしょう。
「信用を積み重ねる」と言ってもその方法は大きく二つあります。一つ目はユダヤ人が重視する「契約を守る」という点です。これは、ユダヤ人社会だけでなく日本でも「人との約束は守りましょう」と教えられているため、多くの人が同意できる内容です。
もう一つは「相手の価値観を理解・尊重する」ということです。紹介したとおりユダヤ人は何よりも契約を重視します。だからこそ契約を徹底的に守ることがユダヤ人の価値観を理解し尊重することにつながるのです。これが中国人であれば、契約を守ることよりも相手の面子を立てる方が信用を積み重ねることに繋がります。これは、中国社会では面子が最も重要とされているからです。
このように相手の文化を理解し尊重することが信用を積み重ねることに繋がっていきます。
顧客からの信頼を得るために今日から取り組むべきこと
藤田田はユダヤ人の絶対的価値観である「契約を守る 」ということをユダヤ人に対して貫き、ユダヤ人のサポートによってビジネスを成功さました。この事例から私たちが顧客の信頼を得るために今日から取り組んでいくことをご紹介していきます。
「曖昧な約束」をしない
日本は「ハイコンテクスト文化」と呼ばれる文化の国です。ハイコンテクスト文化とは、言葉を用いずに意思疎通を図ることができる文化のことで、「察する」「思いやり」「忖度」「空気を読む」など同じような価値観を持っている人間だからこそ通用する意思疎通の方法です。
ハイコンテクスト文化は特に日本のように島国で単一民族の国でよく見られ、その文化圏に属しているのであればコミュニケーションには困りませんが、異なる文化圏ではコミュニケーションの方法がわからないため、グローバル化や価値観の多様化が進む昨今では批判の対象にもなっています。
ビジネス上でも「なるはやで(なるべく早く)」「今日中」「できるだけ」など相手との衝突を避けるためにあえて曖昧な言葉を使って約束をする文化が残っています。
これらの曖昧な約束は、顧客とのトラブルを生む原因になるだけでなく、自分の業務の優先順位を決める際にも曖昧になってしまう要因となります。
契約書を交わさないレベルの約束はビジネスで日常的に行われます。だからこそ、「あの人はしっかり約束を守る」という信頼を得るために、まずは約束の期限を「明日の12時まで」「この範囲までの仕事を引き受けます」など明確にして確実に履行していきましょう。
顧客や顧客企業の持つ価値観を理解・尊重する
日本国内の企業同士でやり取りをしている場合、基本的に文化背景が同じ人同士のコミュニケーションとなります。それでも「企業文化」「社風」という言葉があるように企業にはそれぞれ固有の価値観があり、 そこで働く人たちも固有の価値観を持っています。
ビジネスにおいて顧客からの信頼を得るためには、相手の価値観を理解・尊重することで「私たちのことを理解してくれている」と思ってもらう必要があります。
そのためには、顧客とのコミュニケーションをしっかり取り、「絶対にやってはいけないこと」や「やると喜ばれること」を把握して顧客と接することが重要です。
『スミタイ向上委員長』のまとめ
藤田田の著書「ユダヤの商法」は高度経済成長期のビジネス書として大ヒットした名著です。ソフトバンクの創業者・孫正義は高校生の時に「ユダヤの商法」を読み、藤田田に会うことを熱望しました。
彼は持ち前の行動力で藤田との面会を果たすと、アメリカ留学に関する相談をし「アメリカでどんなことを学んで来れば良いでしょう」と質問しました。すると藤田は「これからはコンピューターの時代だからアメリカでコンピューターの勉強をすると良い」とアドバイス。孫正義はこれを守ってアメリカ留学し、ITに関する勉強を積み、ソフトバンクを創業しました。
創業後、孫正義が経営者として藤田と面会すると、藤田は「あの時の高校生か!」と喜び、その場でパソコン300台を発注しました。
アドバイスは約束とは少し趣が異なりますが、自分の教えを守ってビジネスを起こした若き日の孫正義への藤田の嬉しさはひとしおのものであったでしょう。
ビジネスといっても、つまるところは人と人との繋がりに帰結します。ぜひ、より良いビジネスパーソンとして活躍するためにも、より多くの人から信頼されるようなビジネスパーソンを目指してください。
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