「いつも顧客に『押しの営業』をしてしまい怒られてしまう」
「デキる営業がどうやって顧客の心を掴んでいるのか知りたい」
不動産営業では「押しの営業」が見られますが、トップの売上をあげる不動産営業パーソンは「一歩引く勇気」を持って顧客と向き合い、信頼と売上を獲得しています。営業の中では押すだけでなく引くことで得られるメリットが多いため、引くポイントを理解することで営業として一段レベルアップすることが可能です。そこで今回は、押しの営業のデメリットと一歩引く勇気について解説していきましょう。
この記事で紹介する内容は以下の3点です。
- なぜ多くの営業パーソンが「押しの営業」に走るのか
- 「押しの営業」のデメリット
- 「一歩引く勇気」とは?
なぜ多くの営業パーソンが「押しの営業」に走るのか
売れない営業パーソンの営業スタイルは「押しの一手」です。なぜ多くの営業パーソンが「押しの営業」に走るのか、その理由を解説していきましょう。
歩合給なので、売らなければ給料が上がらない
不動産営業の多くは歩合給によって給料が左右されます。当然、売上が良ければ給料が上がり、売上が少なければ給料は下がります。歩合給の割合は不動産会社によって異なりますが、5%〜20%と様々です。成果主義を掲げる会社の多くは歩合給の割合を高めに設定することで営業パーソンの奮起を促します。
成果主義は優秀な営業パーソンにとってメリットが多い制度ですが、そうでなければ収入の不安定化に繋がります。売れない不動産パーソンの多くが「売らなければ生活が安定しない」という危機感が営業スタイルにも現れ、押しの一手になってしまう場合があります。
他の不動産営業に顧客を取られることを恐れている
自社所有で独占的に販売を行なっている物件を除き、ある物件を一つの不動産会社からしか購入できないということは基本的にありません。特に中古物件の場合は国土交通省から指定を受けた不動産流通機構が運営している「REINS」に情報が公開されています。REINSに公開されている特定の物件に購入者が興味を持ったまま帰ってしまった場合、別の不動産会社で同じ物件を契約されてしまう可能性があります。
また他社でも物件が取り扱うことができるため、他の不動産会社が別の顧客に物件を売却してしまう可能性があります。このように、せっかく営業をかけても契約が取れないリスクがあるため、その日のうちに契約を締結しようと押しの営業に繋がる場合があります。
顧客のニーズを引き出せない
営業パーソンの中には、顧客ニーズを十分に引き出せないまま押しの一手で営業を行う人もいます。「駅近の物件」「間取り」「価格」など、顧客ごとに異なるニーズを把握しないまま物件のアピールポイントだけを押して契約を取ろうと考えるとこのような営業スタイルになってしまいます。顧客数や取り扱っている物件数が多いとそれぞれの顧客や物件に合わせた営業ができなくなり、一律的に押しの営業で対応しようとしてしまいます。
「押しの営業」のデメリット
押しの営業で契約を取ることは不可能ではありません。事実、押しの営業だけで成果を上げている営業パーソンもいます。しかし、押しの営業に頼っているといくつかのデメリットがありますので解説していきましょう。
「もう付き合いたくない」と思われ紹介に繋がらない
押しの営業で成約を取れても、押しの一手で購入した顧客は「この営業とはもう付き合いたくないな」と考える場合があります。特にアフターフォローを怠ると「売るときだけ強引に売り、その後は何もしてくれない」と思われてしまいます。
このような印象を持たれてしまうと、この顧客から別の顧客を紹介してもらうことはまず不可能です。顧客の先に別の顧客が眠っている可能性があるということを心がけて接客を行いましょう。
会社全体のブランドイメージが下がる
押しの営業を続けていると、成約の有無に関わらず顧客に不快感を与える場合があります。顧客からの悪評は顧客だけに止まらず、顧客の周辺に広まってしまう可能性があります。こうなると、デメリットは個人だけでなく会社全体に広がってしまうでしょう。
特に近年は不動産会社やハウスメーカーの口コミや評判がインターネットで公開されるようになりました。押しの営業で顧客に不快なイメージを持たせると、悪評がネットで広がってしまう可能性があります。悪評が広がると会社全体のブランドイメージが毀損されてしまいます。情報の検索が容易になったからこそ、押しの営業の弊害が可視化されるようになった点には注意が必要です。
「一歩引く勇気」とは?
不動産トップの営業は皆「一歩引く勇気」を持っています。一歩引くことで顧客からの印象を良くし、成約率を高めることができるでしょう。また、好印象のまま契約が締結できれば別の顧客を紹介してもらったり、インターネットで高評価のレビューが期待できます。ここでは「一歩引く勇気」のポイントについて解説していきましょう。
デメリットを全て伝える
最初のポイントは「デメリットを全て伝える」ことです。押しの営業をしていると販売する物件のメリットしか伝えず、それが却って顧客の不信感を煽ります。物件の良い・悪いを決めるのは顧客です。気に入っている物件であればデメリットがあっても許容して購入することもあるため、営業が伝える情報を選ばない方が良いでしょう。また、欠点でもしっかりと内容を伝えることで営業としての誠実さが伝わります。
トップ営業になる営業パーソンはデメリットを伝えることの有効性を理解しています。一歩引き、顧客のためになる情報は全て伝えます。最初は情報を全て伝えることで契約を逃してしまうのではないかという恐怖心を抱くかもしませんが、勇気を持って顧客に包み隠さずにデメリットを伝えられるのが本当の営業パーソンです。
当日中のクロージングを迫らない
営業パーソンの中には、当日中に契約をしないと顧客がそのまま逃げてしまうのではないかと考える人がいます。不動産仲介の場合は同じ物件を他の不動産会社で成約されたり、別の顧客が物件を購入する可能性があるため、一刻も早く契約しなければならないと考えて押しの営業を行なってしまうのでしょう。しかし、顧客に「この物件で本当に良いか」を考える余裕がないまま契約を締結してしまうと、後々になって「もっとしっかり検討すれば良かった」と後悔させてしまうことになります。この後悔は「あの営業が契約を急かしたからだ」という不満につながります。
迷っている顧客の背中を押すのは営業の大切な役目ですが、契約欲しさや物件を他の顧客が購入する不安にかられてクロージングをおこなうのは一流の営業パーソンとはいえません。顧客が納得して契約できるように一歩引いて待つ勇気を持ちましょう。
「押す」と「引く」をうまく使い分ける
「一歩引く」といっても、引いてばかりでは契約は取れません。デメリットを全て伝えたり、クロージングを後日に持ち越したあとで「ご検討の状況はいかがでしょう?」と適切な追客ができるのが一流の不動産営業パーソンです。
押すタイミングと引くタイミングを測るためには、顧客が物件を見てから購入するまでの心理的な変化や顧客のニーズを把握しておく必要があります。しっかりと顧客とコミュニケーションを取り、適切なアプローチを行いましょう。
スミタイ向上委員長のまとめ
今回は、不動産のトップ営業が共通して持っている「一歩引く勇気」について解説してきました。不動産営業というと押しの営業のイメージが強くありますが、押しているだけでトップ営業になることはできません。
また、押しの営業を続けて顧客に悪印象を持たれてしまうと本人だけでなく会社全体のイメージが悪くなり、営業しにくい状況になってしまいます。最近はインターネットで評価が出回り、悪い評判を消すのは簡単ではありません。自分自身の営業成績を上げ、会社のイメージを向上してビジネスの成長を加速させるためにも、ぜひ「一歩引く勇気」を持って営業に臨んでいきましょう。